Pythonのabc(抽象基底クラス)の価値は何でしょうか？

Question

Pythonのabc(抽象基底クラス)の価値は何でしょうか？
他の言語で言うところのインターフェースに近い役割だと思っているのですが、そもそもPythonは動的型付け言語なので、あまり意味を成さないように思います。

型ヒントやmypy等を併用する場合は意味があるかと思うのですが、それらと組み合わせて使用することを前提としている機能なのでしょうか？

Answer 1

このモジュールは Python に PEP 3119 で概要が示された 抽象基底クラス (ABC) を定義する基盤を提供します。なぜこれが Python に付け加えられたかについてはその PEP を参照してください。
abc --- 抽象基底クラス — Python 3.9.4 ドキュメント

ということなので、PEP 3119を確認。

This is a proposal to add Abstract Base Class (ABC) support to Python 3000. It proposes:

・ A way to overload isinstance() and issubclass().
・ A new module abc which serves as an "ABC support framework". It defines a metaclass for use with ABCs and a decorator that can be used to define abstract methods.
・ Specific ABCs for containers and iterators, to be added to the collections module.
PEP 3119 -- Introducing Abstract Base Classes | Python.org

筆頭に挙げられているのがisinstanceとissubclassのオーバーロード、です。二つめはどういう機能か、ということを書いているのであって、普通の内容。三つ目はコンテナやイテレータに特化したABCを用意しますよ、という話です。

ここから読み取れる想定されていたニーズとしては、たとえば、
「引数で受け取ったオブジェクトがSequenceであればちゃんと処理できるという仕様で関数を作る」
ということをやりたいときに、

• 受け取ったオブジェクトがSequenceでないときは適切に例外処理をしたい
• 引数で受け取ったオブジェクトがSequenceかどうかを判定するのは難しい

組み込み型であれば最悪列挙できるかもしれないが……てこと

• だからisinstance(x, Sequence)とか書けるとものすごく便利なのではないか

みたいなことだった訳で、つまり「動的に適切な型チェックをする」という方向性だったと考えられます。

我々のように「普通に」Pythonを道具として使うというスタンスでコードを書いているとあまり意識しませんが、高名なライブラリのコードを読むと、外から受け取ったものはだいたいisinstanceの嵐をくぐって、型によってぜんぜん違う処理に分岐したりもし、万が一（？）これは想定されていない型だな……となったときには例外送出して止める、みたいに書いてあります。なので、こういう機能は、要るときは要ります。

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型ヒントやmypy等を併用する場合は意味があるかと思うのですが、それらと組み合わせて使用することを前提としている機能なのでしょうか？

に関しては、abc自体はバージョン 2.6から追加されてしまっており、型ヒントの機能が追加されるのにはるかに先行している、という事実を書き添えておきます。

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「アヒルのように見えて、アヒルのように鳴けば、それはアヒルである。」
「鳴き声を聴き比べるコードは共通化した方が良いのではないか。」

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うがった見方をした場合……

Pythonは歴史的にはDuck Typingバンザイな文化であったのは確かであり、この場合、たとえばライブラリ製作者の立場で考えると「ユーザが独自定義したいい加減なクラスのオブジェクトが投げつけられてしまう」、逆にライブラリユーザの立場から考えると「どの程度まで独自定義クラスを作り込めばこのライブラリに投げれるのかわからん」という苦悩がそれぞれに発生します。

その辺を統制する仕組みがあると、基本的にはみんな助かったと考えられます。ライブラリ製作者はABCを書けばいいし、ユーザはABCに従って実装すれば良いのですから。

Comments

[raise_a_hand]

ありがとうございます。
> たとえばライブラリ製作者の立場で考えると「ユーザが独自定義したいい加減なクラスのオブジェクトが投げつけられてしまう」、逆にライブラリユーザの立場から考えると「どの程度まで独自定義クラスを作り込めばこのライブラリに投げれるのかわからん」という苦悩がそれぞれに発生します。
ここの点は重要かと思いました。
実際、あるABCを継承し、必要なabstractメソッドを実装しないと、そのクラスを初期化した時点でエラーが発生する認識です。
これは他の言語におけるインターフェースと同じ仕組みかと思います。
この仕組みによって、ライブラリ製作者は開発者にインターフェースに沿って実装することを強要できますし、開発者も何を実装したら良いか明確なので楽ですね。
社内で共通基盤を作る際なども便利そうです。

Answer 2

使う側からするとabcのメリットは「mixinでメソッドが追加されることが期待できる」という感じかと思います。
https://docs.python.org/ja/3/library/collections.abc.html
から、例えばABCのSetを継承して__contains__, __iter__, __len__の3つを実装したら__le__, __lt__, __eq__, __ne__, __gt__, __ge__, __and__, __or__, __sub__, __xor__, isdisjointが全部手に入ることが期待できます。

>>> from collections.abc import Set

>>> class OneToFiveSet(Set):
...     def __contains__(self, x):
...         return isinstance(x, int) and 1 <= x <= 5
...     def __iter__(self):
...         return iter(range(1, 6))
...     def __len__(self):
...         return 5

>>> s = OneToFiveSet()

>>> s > {1,2,3}   # 実装してない__gt__が使える
True

ただしmixinには抽象クラス（と多重継承）があれば実際は十分です。

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Pythonの言語仕様設計者がabcを必要とした理由はまたちょっと複雑そうです。

あるオブジェクトがあるプロトコルを満たしているかは、「あるメソッドを持っているか(=Duck Typing)」だけでは十分じゃないケースがある。精確にはPythonの仕様の中にもう存在してしまっていた。
という理由な気がします。

Sequenceプロトコルがそうです。
Sequenceであるためには、Iterableであってかつ__len__メソッドを実装している必要があります。が、逆は言えません。つまりIterableであってかつ__len__メソッドを実装していてもSequenceであるとは限りません。

https://docs.python.org/ja/3/glossary.html#term-sequence

dict は __getitem__() と __len__() もサポートしますが、検索の際に整数ではなく任意の immutable なキーを使うため、シーケンスではなくマッピング (mapping) とみなされているので注意してください。

とあります。
dictがSequenceでないことは表現するには、Duck Typingでは不足です。
それでもdictはSequenceでないということを表現したかったのでしょう。

ここでabcを導入する必要があったのではないでしょうか。

>>> from collections.abc import Sequence

>>> issubclass(dict, Sequence)
False

実際dictはSequenceではないです。

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(追記)

型ヒントやmypy等を併用する場合は意味があるかと思うのですが、それらと組み合わせて使用することを前提としている機能なのでしょうか？

そうだと思いました、という回答でした。

型チェックでdictはSequenceでないことにしたい、つまり

def foo(seq: Sequence): pass

d = {'a': 1}
foo(d)  # ☆

に対して☆で警告をだしたいという要求があります。
それにはDuck Typingでは不足で、そこで導入されたのabcだったのでは、ということです。

Answer 3

pythonのオブジェクト指向に慣れた人にとってはあまり使い道はないと思います。

pythonの公式マニュアルには（「アヒルのように見えて、アヒルのように鳴けば、それはアヒルである。」）インターフェースというのが書かれていて、処理系はこのインタフェースの考え方で作られていますし、多くのユーザはこれをつかっているからです。

他のプログラミング言語のオブジェクト指向に慣れた人はABCを使いたいかもしれません。

クラスの階層を気にするひとにとっては、スーパークラスを定義してからサブクラスを定義するというトップダウンな定義をしなくても、後付けでスーパークラスを定義できるからです。