テンプレートクラスと不完全型について

Question

通常、クラスを定義する際、メンバに自分自身を持たせようとすると不完全型なのでエラーになると思います。これは、テンプレートクラスの場合でも同様です。

// テンプレートではない場合
struct X {
  X x = {}; // X は不完全型なのでエラー
};

// テンプレートの場合
template <typename T>
struct X {
  X x = {}; // 不完全型なのでエラー
};

ここで、メンバに自分自身を持たせようとする際に static inline をつけたとき、テンプレートの場合にはエラーにならないようです。コンパイルは、gcc と clang 両方で試しました。[追記] このとき、実際にインスタンス化して確認しました。また、MSVC で試したところ、Internal compiler error になるようです。

// テンプレートではない場合
struct X {
  static inline X x = {}; // 不完全型なのでエラー
};

// テンプレートの場合
template <typename T>
struct X {
  static inline X x = {}; // コンパイルが通る
};

最後の例のコンパイルはなぜ通るのでしょうか...ご回答よろしくお願い致します。

Answer 1

「規格書のどこに書いてある」ということまでは言えませんが、推測で。

不完全型とは、オブジェクトのサイズが決定できない型のことですが、
それぞれの場合で不完全型になる理由が異なるからだと思います。
その理由とは、(1) その型を使用した時点で定義が終わっていない、(2) その型のサイズを決定することが不可能である、の2つです。

static なし・template なしの時は、(1) と (2) の両方当てはまります。
static なし・template ありの時は、(2) だけ当てはまります。
static あり・template なしの時は、(1) だけ当てはまります。
static あり・template ありの時は、どちらにも当てはまらないためエラーになりません。

template なしの時に (1) に当てはまるのは、template でないときは、X x; と書くとその時点で変数の定義になりますが、struct X の括弧の途中なので定義が終わっていないためです。
template ありの時に (1) に当てはまらないのは、template 構造体の場合は、それを使った時点で初めて実体化されるため、構造体宣言の時点では定義が終わっていなくてもいいためです。

static なしの時に (2) に当てはまるのは、メンバー変数に自分自身が含まれると、無限再帰になり、サイズを決定することができないためです。
static ありの時に (2) に当てはまらないのは、static 変数はオブジェクトのサイズに含まれないため、X のサイズは0（または処理系定義のサイズ）であると決定できるためです。

Comments

[alphya]

ご回答ありがとうございます。不完全型になる理由について、私も同じ意見です。

しかし、回答中ではコンパイルに成功すると思われる下のコードは、gcc ではコンパイルが通りますが clang と MSVC ではエラーになります。(gcc か clang & MSVC のどちらかにバグがありそうです)

template <typename T>
struct X {
static inline auto x = X{}; // clang, MSVC でエラーになる
};

回答にあるように考えれば上のコードはコンパイルに通るはずですが、clang までエラーになるので、本当にそうなのか判断できないでいます...

Answer 2

テンプレートを書いただけなら、struct Xがまだクラスとして宣言されてないので
コンパイルエラーも出ないだけだと思います
どこかでテンプレートクラスを使えば、そのときに宣言されてコンパイルエラーが出るようになると思います

Comments

[SaitoAtsushi]

私もそう思って試してみたんですが、少なくとも gcc と clang ではエラーにはならないことは確認できました。