C++のシングルトンを関数内静的変数として確保するのが正しい理由

Question

WikipediaやMore C++ Idiomsでも紹介されている、シングルトンインスタンスの確保の仕方

class Singleton {
  // 各種コンストラクタを外部から呼べなくするあれこれ
    :

  // インスタンスの取得メソッド
  static Singleton& getInstance(){
    static Singleton inst;
    return inst;
  }

  // 以下実装
    :
}

ですが、このクラスをヘッダファイルで宣言した場合にSingleton::getInstance() が唯一オブジェクトを返してくれる理由が今ひとつ理解できていません。

このファイルを Singleton.h と名付けたとして、複数のcppファイルからこのヘッダをインクルードした場合、各cppファイルで別々にこのヘッダが展開され、別々にこのクラスを認識し、getInstance関数も定義されたことになるので、各cppファイル毎に別のインスタンスを見てしまうのでは？ と疑問に思うわけです。

どう理解すべきでしょうか。

Answer 1

複数のcppからインクルードされるヘッダでの定義が多重定義にならないのか？という疑問は深いです。
私自身、長年曖昧なままにしていたので、ヘッダのインクルードでいつも無駄な苦労をしてました。
そこで、少し異なる視点から回答させて下さい。

①関数の中で定義されたstatic変数は、関数の定義毎に１つ領域が確保されます。
②同じ関数の定義はプログラム全体で１つだけしか許されません。

従って、ご提示されたSingleton::getInstance()関数の定義は１つしか存在できず、その中で定義されたstatic変数も１つだけ領域が確保されます。
ですので、Singleton::getInstance()が返すinstはみな同じものになります。

複数のcppファイルからこのヘッダをインクルードした場合

(後略)

「同じ関数の定義は１つしか許されないのに、複数のcppからインクルードされるヘッダで定義すると多重定義されることにならないか？」という疑問に帰着すると思います。

yohhoyさんが参照されているように、クラス定義の中で直接定義されたメソッドはinline関数になります。
inline関数はODR(One definition rule)の例外として、同じ定義であれば複数のcppで定義することが許可されています。この辺はここが詳しいです。

そして、このODR例外は下記流れで実現されていると理解しています。
複数のcppでSingleton定義をインクルードした場合、Singleton::getInstance()内部のstatic変数instは各cppをコンパイルしたobjファイルに含まれてしまいます。しかし、これらのstatic変数instは全て同じ定義ですから、リンカにより重複が取り除かれます。

Comments

[yuba]

> inline関数はODR(One definition rule)の例外として、同じ定義であれば複数のcppで定義することが許可されています。

これが知りたかったことでした。ODRという規則も含め、勉強になりました。

Answer 2

Singleton::getInstance()は「クラス定義中にて定義されるメンバー関数」であり、暗黙にinline指定されます。inline関数は複数ソースコード上で重複定義されても、最終的なプログラム中には単一実体しか存在しない事が保証されます。

メンバー関数より引用：

メンバー関数は、クラス定義の内側でも外側でも定義することができる。クラス定義の内側で定義されたメンバー関数を、inlineメンバー関数という。

inline指定子より引用：

インライン関数は、その関数を使用するすべての翻訳単位で、「定義」されていなければならない。インライン関数の定義は、すべての翻訳単位で、まったく同一でなければならない。

Comments

[yuba]

Singletonクラスもそのメンバ関数も、（展開結果として）複数のcppに別々に宣言されているが同一実体だと認識されているということですね。

ありがとうございます。