Box はなぜ中身をムーブできるのか

次のようにすると Box は Box の中身をムーブすることができます。

rust
1struct S;
2let s = Box::new(S);
3*s; // OK

この Box のような型を作ろうと考えたとします。 * は Deref トレイトによってオーバーロードできるので次のようになるはずです。

rust
1struct S;
2struct U(S);
3impl std::ops::Deref for U {
4    type Target = S;
5    fn deref(&self) -> &S {
6        &self.0
7    }
8}
9let s = U(S);
10*s; // Error: cannot move out of borrowed content

しかし、借用した値をムーブできない旨のエラーがでます。それは確かに Deref は &self を取っているので分かるのですが、これは Box でも同様なはずです。

なぜ Box では中身をムーブすることができるのですか？特別扱いなのでしょうか。
また、こういう型をユーザー定義することはできるのでしょうか。

行動規範の内容に同意します

回答1件

ベストアンサー

Box はコンパイラに特別扱いされていて、deref move と呼ばれる振る舞いが可能です。このような型をユーザーが定義することはできません。将来は変わるかもしれませんが、いまは目立った進展はないようです。

Box はどんな風に特別で、どういう経緯でこうなったのかは、以下の記事で解説されています。

Rust Tidbits: Box Is Special

簡単にまとめると、

Rust 1.0 以前、Box<T> 型は存在せず、 ~T という構文が使われていた。
~ は所有していることを意味していたが、色々と混乱の元になり 1.0 リリース前に取り除かれた。
最終的には Box<T> という型（見かけ上のユーザー定義型）になったが、コンパイラの内部では今でも特別扱いされている。
deref move のような振る舞いをユーザーが定義できるようになるには、言語機能が足りない。

なお記事中の "it literally is treated as a completely new kind of type" では、コンパイラ内部の型を表す enum の TyBox の定義にリンクされていますが、その後、少し整理されて、現在では TyAdt の一部になっているようです。