【Rust】println!の挙動

Question

前提

println! の挙動について質問です. ふと気になってしまったので質問します. なにか勘違いしていたらすみません.

該当のソースコード

fn main() {
  let mut s = "Hello".to_string();
  println!("s = {}", s); 
  
  s.clear();
  println!("s = {}", s);
}

これの実行結果は

s = Hello
s = 

となりますが, これは println! に s が勝手に参照として渡されているということなのでしょうか. 私には String は Copy トレイトを実装していないので3行目の println! には値が渡っているように見えています.

以下のようにs.clear() の前が普通の関数なら所有権の移動が起こり, コンパイルエラーになりますが, println! のようなマクロであればそれが起きないのでしょうか.

fn print(s: String) {
    println!("s = {}", s)
}

fn main() {
    let mut s = "Hello".to_string();
    print(s);
    
    s.clear(); //ERROR
    println!("s = {}", s);
}

エラーメッセージ

   Compiling playground v0.0.1 (/playground)
error[E0382]: borrow of moved value: `s`
 --> src/main.rs:9:5
  |
6 |     let mut s = "Hello".to_string();
  |         ----- move occurs because `s` has type `String`, which does not implement the `Copy` trait
7 |     print(s);
  |           - value moved here
8 |     
9 |     s.clear();
  |     ^^^^^^^^^ value borrowed here after move

For more information about this error, try `rustc --explain E0382`.

最後に

ご教示いただけますと幸いです.

Answer 1

マクロは値も参照も受け取りません。 言語としての解釈が始まる前の字面を変換するのがマクロの役割であり、受け取るのはトークン列です。 この場合の s は変数の値でも参照でもなく s という「名前」です。

マクロはマクロを含まないプログラムに展開されます。 展開された後の形で所有権を移動するか参照をとるか、あるいは何にも使わないのかはマクロの定義次第です。 マクロの実引数として与えたものは必ずしも Rust の通常の式の規則に従わずに個別のマクロのルールで解釈されます。

分かりやすい例として、 println! では

println!("{value}", value=4);

というような書き方ができますが value=4 というのは変数 value に 4 を代入しているわけではなく、 println! のルールの中ではこの書き方でラベルを付けて書式のほうではそのラベルの名前で参照できるという独自のルールがあるからこう書けるわけです。

• マクロに与えた実引数をどう解釈してどう展開するかは個々のマクロ次第。
• println! の場合は変数の所有権を取っていない。