クロージャが FnOnce トレイト止まりに推論される場合

次のようなコードを考えます。

rust
1struct S {
2    a: Box<i32>,
3    b: Box<i32>,
4}
5
6fn main() {
7    let s = S {
8        a: Box::new(1),
9        b: Box::new(2),
10    };
11    let _closure = || { let _sa = s.a; }; // エラー
12}

このとき エラー の行で

error[E0507]: cannot move out of captured outer variable in an `Fn` closure
  --> /home/dai/workspace/daily/2018/0301/junk03-51-57.rs:11:35
   |
11 |     let _closure = || { let _sa = s.a; };
   |                                   ^--
   |                                   |
   |                                   cannot move out of captured outer variable in an `Fn` closure
   |                                   help: consider using a reference instead: `&s.a`

error: aborting due to previous error

とエラーになります。コンパイラは s の借用で済むと判断して、クロージャに Fn まで実装したところ、 Fn クロージャの中で借用した値をムーブしようとしているためにエラーになっているようです。

しかし、 s.a をムーブしようとした段階で s のムーブが必要な (あるいは _sa に相当する形で s.a だけを部分的にムーブする必要がある) ことはコンパイラには分かると思います。そういう形で環境に所有権を移してしまって FnOnce 止まりに推論すればよい気がします。さらに不思議なことは、move をつけて明示的にムーブを指示しても s をムーブしてくれませんでした。

このクロージャを次のように明示的に s を取るように書き換えると

rust
1let _closure = || {
2    let s = s;
3    let _sa = s.a;
4};

無事コンパイルが通るようになりました。

このような挙動になっているのは何故なのでしょうか。
s.a だけをムーブしようとして、間違えて s ごとムーブしてしまうことを防ぐため？
それを防ぐ意味も分かりませんが、だとすれば前述の通り部分的にムーブすることでも達成できると思います。
あるいは、このようにしなければ都合の悪いことがあるのでしょうか。

行動規範の内容に同意します

回答1件

ベストアンサー

最初の例のコードはRust 1.23.0以降ならコンパイルが通るようです。

text
1$ rustc +1.22.0 main.rs
2error[E0507]: cannot move out of captured outer variable in an `Fn` closure
3  --> main.rs:11:35
4   |
511 |     let _closure = || { let _sa = s.a; }; // エラー
6   |                                   ^--
7   |                                   |
8   |                                   cannot move out of captured outer variable in an `Fn` closure
9   |                                   help: consider using a reference instead: `&s.a`
10
11error: aborting due to previous error
12
13$ rustc +1.23.0 main.rs
14$